海外派兵できる「自衛軍」、軍事国家作りを目指す  
自民党の「新憲法草案」(2005年11月)への批判

〜自民党の改憲案に反対し、平和憲法を守る世論を広げよう〜

                              



■改憲へ、早まるスピード
 2005年11月22日、自民党の党大会は、「新憲法草案」を採択しました。
 これは、同年8月に発表された「新憲法第一次案」を、自民党の正式な改憲案として完成させたものです。初めて自民党が全党一致の公式見解として 「具体的な条文による改憲案」 を発表したものであり、改憲の動きの急速化を思わせます。
 注目すべきは、「第9条」を全面的に書き換えて、「自衛軍」の保持を明確に打ち出したことです。他にも、人権よりも公の秩序を重視している点や、内閣総理大臣の権限強化など、多大な問題点を含む改憲案ですが、ここでは憲法9条改悪の点に絞って解説します。
 
■第2章は、「戦争放棄」から「安全保障」へ
 現在の日本国憲法は、「第二章 戦争放棄」の中に戦力不保持を明記した第9条が規定されています。
 今回の自民党案は、「第二章 安全保障」という章題のもとに、「自衛軍を保持する」などの規定が含まれています。章題が変わったうえ、その内容も従来の約3倍になっています。新しい「憲法9条」は、平和原則の規定ではなく、「軍隊の規定」に変わってしまいます。
 
 第2章の題名が、「戦争放棄」から「安全保障」に変わったことは、重大な意味を持ちます。
 そもそも日本国憲法は、第2次大戦での悲劇を繰り返さないという反省と誓いを込めて、「戦争を一切放棄する」という強い意志を表明し、「戦争放棄」という題名の第2章のもとに、戦争放棄(9条1項)と戦力不保持(9条2項)を定めたのです。9条1項の「戦争放棄」が残されたとはいえ、第2章の題名から「戦争放棄」という言葉を取り除き、自衛軍の創設を定めたことは、第9条の根本的な変質を意味します。
 そのうえ、次に述べるように9条2項の「戦力不保持」が削除されて「自衛軍」が創設されるのですから、9条1項に書かれている「戦争放棄」という言葉は骨抜きにされてしまいます。
 
■海外派兵が可能な「自衛軍」を明記・・・・・ 9条1項の「戦争放棄」は骨抜きに
 今回の自民党案の重大な問題は、「自衛軍」の保持を明記したことです。戦力を保持しないと明確に述べている今の9条2項を、次のように変えようというのです。
 
現憲法・9条2項  (戦力不保持)
 
 
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党案・9条の2(自衛軍)

 @我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。
 A自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
 B自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
 C前二項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

 これまでは、「戦力を保持しない」と明確にうたった憲法9条2項の存在が、自衛隊の海外派兵や武力行使の歯止めとなってきました。ところが自民党案は、これを180度転換して、「自衛軍」という名の「軍隊」の保持を明記しています。そして、「自衛軍」が海外でも活動できることを明記しているのです。
 
■即座に海外派兵できる体制作りへ
 自衛軍は「自衛のため」に活動するように規定されています。しかし、ここでいう「自衛」の意味が問題です。
 自民党首脳は、「『自衛』という言葉には、集団的自衛権も含んでいる」と発言しています。従来の自民党政府すら認めなかった集団的自衛権を、行使できるようにするのが自民党の新憲法案なのです。
 この自民党案により、これまでは不可能だった@海外派兵による武力行使が可能になり、A集団的自衛権も行使できるようになり、B国連決議に基づく武力行使や国連編成部隊の参加も可能になるのです。まさに、「自衛軍」が海外派兵され、アメリカによる先制攻撃の戦争に米軍と一体となって参戦できる体制が調えられることになります。
 
■自衛軍は、総理大臣の強大な権限下に
 さらに問題なのは、「自衛軍」が内閣総理大臣の強大な権限の下におかれることです。自民党案は、自衛軍は総理大臣を「最高指揮権者」と明記し、国会との関係では「承認」を受ければよいことになっています。
  これは、議会制民主主義を踏みにじる重大な問題点があります。軍隊の出動という重大問題を、国民の代表者からなる国会が主体的に決定するのではなく、総理大臣の単独の決定を追認するだけになりかねないからです。
 また、ここでいう「国会の承認」が、「事後承諾」でもよいと法律で定められれば、より重大な問題が生じます。たとえ国民の多数が海外派兵に反対していても、国会が事後承認するか不確実な情勢であっても、総理大臣が民意に反して自衛軍を出動させることが可能になってしまうからです。また、事後的に国会が「不承認」とした場合、すでに出動した自衛軍の行動を止められるのかという重大な疑問があります。
 
 
■「軍事裁判所」の創設で軍法会議も可能に
 自民党案の第76条には、「軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。」との規定が加えられました。
 軍隊内部の規律違反、軍隊への協力拒否、軍事機密漏洩などについて、通常の裁判とは異なる手続により処罰が可能となるものであり、密室での「軍法会議」が可能とされる危険があります。
 このように、司法の面でも「軍事国家体制」が作られようとしているのです。
 
■自民党の改憲案の恐ろしさを広く知らせよう
 このように、自民党の改憲案は、決して「イラクでの給水活動のような国際貢献を可能にする改憲」とか、「自衛隊がPKOに参加できるための改憲」という内容ではありません。露骨に、「戦争放棄」を放棄し、「安全保障」の名のもとで即座に海外派兵・武力行使・参戦できる体制が作られようとしているのです。
 この改憲案の恐ろしさを多くの人に伝えて、「憲法9条を守ろう」の声を広げていく必要があります。
 「九条の会・おおさか」の新しいリーフレットを多くの人へ広げ、九条の会アピールへの賛同を広げていきましょう。


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